今話題の「旅育」とは?メリットや家族での楽しみ方

「旅育(たびいく)」という言葉を聞いたことはありますか? ここ数年、「食育」や「服育」などこどもの生きる力を養う総合的な教育が注目されていますが、そのなかでも話題になっているのが「旅育」です。

しかし、「旅育」とは何なのか、どのようなことをすれば「旅育」となるのか、わからないという方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、「旅育」の基礎知識や普通の旅行との違い、「旅育」のメリット、家族で楽しむ方法についてご紹介します。

「旅育」とは?

「旅育」とは、家族旅行によって得た知識や体験、興味などを役立てて、こどもの成長を促すという考え方です。家族旅行という非日常の体験を取り入れることによって、楽しみながらこどもの生きる力を育てることができます。

普通の旅行と違う点

通常の旅行では、「こどもが楽しめそうなところに連れて行って、遊んで帰ってくるだけ」ということがままあるかもしれません。しかし「旅育」をするためには、単に遊びの要素だけではなく、他の要素も必要です。東洋大学国際地域学部の教授で、日本観光振興協会の旅育推進委員でもある森下昌美氏は、「旅育」の定義として以下の3つの要素があるとし、「最も効果的な旅育にするためには、これら3つの要素を全て満たすことが必要」と述べています。

  • 1旅の体験(異文化・ 非日常体験、旅先での交流など)
  • 2人との時間共有(家族・友人との共通体験、 想い出づくり、日常と比較した共有時間の長さなど)
  • 3旅を素材とした教育(職業教育、郷土教育、地理・歴史教育、国際化教育など)

(引用:森下晶美「“旅育”の現状と定義を考える」(PDF)|日本国際観光学会論文集(第20号)March.2013)

ここから、漫然と旅行を楽しむのではなく、「体験」や「交流」、「教育」という要素が「旅育」には必要となってくることがわかります。

「旅育」のメリット

旅行を楽しみながらもこどもの成長も促すことができるというのは、とても魅力的に感じます。次は、「旅育」には具体的にどのようなメリットがあるのかを説明します。

家族旅行を通じてこどもが成長し、こどもの人生にプラスの影響を与える

「旅育」を定義した森下氏の調査によると、こどものころに家族旅行を経験したことが多い人は、成人後に本人の志向や性格を肯定的にとらえる傾向にあるということがわかっています。なかでも、「適応力」や「自主性」、「コミュニケーション力」、「社会性」、「思いやり・精神の安定性」といった点において、自分自身を肯定的にとらえているとしています。

旅行をすると日常とは異なる環境に身を置くことになり、旅行先の環境に適応していく必要があります。さらに普段接することのない人と触れ合う機会も多くあるので、コミュニケーション能力を向上させる機会にもなりえるでしょう。

旅行というのは公共の場所に行くという意味合いも強くなります。公共交通機関でしっかりと順番待ちをし、公共の場で騒いだり迷惑をかけたりしないといったマナーを実践的に学び、社会性を得る機会にもなるはずです。

このように、旅行を通した「体験」や「交流」などを通して、こどもの人生にプラスの影響を与えてくれるところに、「旅育」のメリットがあります。

(参考:森下晶美「“旅育”の現状と定義を考える」(PDF)|日本国際観光学会論文集(第20号)March.2013)

「ホンモノ」がこどもの関心の芽を育てる

旅先では、さまざまな人たちと出会う以外にも、自然・芸術・歴史など「ホンモノ」に触れる機会がたくさんあります。「ホンモノ」は、こどもたちの五感や想像力、感受性を刺激してくれます。そこで生まれる「なぜ?」「どうして?」などといった疑問や「そうだったのか」といった発見は非常に貴重な学びの機会となるでしょう。こういった普段はなかなかできない体験は、日常では育ちにくい関心の芽を育てることができるのです。

家族で「旅育」を楽しむ方法

これだけのメリットがあれば家族旅行に取り入れたいと思う方も多いと思います。次は、こどもと一緒に「旅育」を楽しむためのヒントを紹介していきます。

こどもと一緒に旅行の計画をつくろう

旅行の計画・準備の段階から、こどもに積極的に関わってもらいましょう。そのためには、家族で一緒に会議をすることがおすすめです。

会議では、まず「旅行のテーマ」を決めましょう。「身近な食べ物である醤油がどう作られているのか、事前に調べて、実際に醤油工場を見学して製造の工程や作業を知る」とか、「日本で一番長い川を調べて、どういう成り立ちになっているのかを知るために、上流から下流まで実際に見に行ってみる」など、具体的な課題と、どうすれば理解できるかまで考えておくことをおすすめします。

会議において大事なことは、こどもの出した意見を尊重することです。しかし、どうしても日程調整や予算の関係で却下せざる得ない場合も出てきてしまうでしょう。そういったときのために、いくつかのアイデアやプランを親が準備しておいて、こどもに選んでもらうような形にすると、こどもの意見を尊重することができます。

旅行の計画を立てるうえでの役割を、きちんとこどもに割り振ることも大切です。小学校の低学年であれば、算数で「時刻」や「時間」について学びます。その知識を生かして、電車の時間や、参加する体験プランの時間をこどもに調べさせてみましょう。何にどれくらい時間を使うのかを考えさせて、1日のプランニングをさせてみるのもよいでしょう。

計画の中では、「電車やバス、施設などでは静かにする」「学校で勉強したことを自分の目で確かめる」といった「目標」も一緒に決めておきましょう。旅行の中でそれらを達成できたら、積極的に褒めてください。旅行の中で親に褒めてもらったというこどもの成功体験は、想像以上に大きな成長につながります。

まずは親が楽しみ、こどものお手本になろう

旅「育」という言葉通り、旅育には「教育」という大きな要素があります。しかし、いかにも勉強のため、教育のためといった目的を全面に押し出し、こどもに学習を強く感じさせてしまうようでは、せっかくの家族旅行を楽しむことができません。まずは、親が楽しむ姿勢を見せましょう。また、親が旅先でのマナーにも気を配ることも大切です。親の背を見て子は育つといいます。親がお手本となり、一緒に楽しみ成長することで、こどもも一緒に成長することができるのです。

また、旅先で家族が別々になる時間を設定することも、実は「旅育」に効果があります。宿泊施設やレジャー施設などといった場所では、こどもだけで参加できるプログラムもあります。そこで初対面の人たちと接する機会があれば、こどものコミュニケーション能力や自主性が育ちます。さらに、こどもたちが「一人で頑張った」経験を家族で共有することで、家族の絆が深まるでしょう。

家族で一緒に「旅育」をしよう

今回は「旅育」の知識とメリット、実践方法について紹介しました。楽しい家族旅行の中で、こどものコミュニケーション能力や社会性を育てることができるのはとても魅力的です。まずは、次の大型連休に向けて家族で作戦会議を開くところから始めてみてください。旅先ではさまざまなワクワク、ドキドキする出会いがこどもたちを待っていることでしょう。

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